ISPFとISPFコマンド

ISPF(Interactive System Productivity Facility)は、エディターやデータセット・リストなど、z/OSにおけるJCLやプログラムの開発ツールとして知られています。しかし、それらはISPFの機能の一部(PDF:Program Development Facility)にすぎません。ISPFは、コマンド・ベースのTSOにおいて、画面パネルを利用した、対話型プログラムの実行プラットフォームとして動作します。エディターもDSLISTも、ISPFを利用して作られた1つのISPFアプリケーション・プログラムです。ISPFの概要は、こちらのz/OSのしくみ:基礎編「TSOとISPF」にも解説があります。

ISPFは、画面パネルに表示されたガイダンスに従って、画面内に用意されているフィールドに必要なパラメーターやデータを入力して実行すれば、細かなコマンドなどを覚えなくても大抵の操作ができるようになっています。WindowsのGUIほどではないにせよ、現在のISPFにはポップアップ・ウィンドウやプルダウン・メニューを実装する機能もあります。予めマニュアルなどを読まなくても、直感で使えるアプリケーションを作れるように出来ています。

そのため、プログラム開発ツールでもあるISPF/PDFも、マニュアルを読んだりコマンドを覚えなくても、パネルを見れば直感ですぐ使えるようになります。しかし、ISPFにもさまざまなコマンドがあって、それらを覚えることでより便利に、より多機能に、よりスマートにISPFを利用することができるようになります。ここでは、それらのコマンドのうちのいくつかを紹介します。

ISPFシステム・コマンド

ISPFコマンドは、パネル内のOptionあるいはCommandフィールドに入力できます。ISPFダイアログであれば、基本的にどのパネルからでも入力できます。コマンド入力によってパネルが切り替わっても、そのパネルの終了後は元のパネルに戻ります。

    ACTIONS

    パネル上部のアクション・バーと本体部の入力フィールド間のカーソル移動を行います。矢印キー(←↑↓→)でのカーソル移動でもかまいませんが、このコマンドを使う方がスムーズにカーソルを移動できます。しかし、いちいちACTIONSと入力していては面倒です。標準ではPF10キーに割り当てられています。PF10キーでアクション・バーにカーソルを移し、タブ・キーでアクション・バー内を移動できます。アクション・バーを多用する人には便利です。ただし、エディターの編集パネルや、DSLISTでのデータセットやメンバーリストの表示中は、PF10キーはLEFTコマンドに割り当てが変わります。

    TSO tso command

    任意のパネルからTSOコマンドを実行できます。TSO LISTALCと入力すれば、ログオン中のTSOセッション(TSOユーザー空間)に割り振られているデータセットを表示できます。入力フィールドが足りない場合は、TSOの代わりにCMDEと入力します。TSOコマンドの入力パネルに切り替わり、より長いコマンド文字列を入力できます。PF3キーで元の画面に戻ります。

    COLOR

    デフォルトのカラー設定を変更できます。赤色が暗くて見にくく感じる人は他の色に変えてもいいかも知れません。設定した色はプロファイルに書き込まれるので、次回のISPFセッションでも有効です。

    DSLIST REFLIST

    これまでにアクセスしたデータセット(直近30個)の一覧を表示します。このリストから、エディターやブラウザー、リネーム、削除、圧縮などができます。

    DSLIST 'dsnlevel'

    任意のパネルからDSLISTを実行できます。dsnlevelは、DSLISTパネルで入力するデータセット名レベルです。ただし、アポストロフィで囲む必要があります。なお、アポストロフィで囲まずに2文字の**を指定すると(DSLIST **)、自分のユーザーIDを第1修飾子とするデータセットがリストされます。

    EPDF 'dsname(member)' B|V

    任意のパネルからエディターを実行できます。BオプションはBrowse、VオプションはViewモードでの実行です。エディターあるいはブラウズ・パネルでPF3キーを押せば元のパネルに戻ります。

    FKA ON|SHORT|OFF

    パネル下部にファンクション・キーのガイドを表示します。SHORTは短形式表示、OFFは消去です。

    KEYS

    ファンクション・キーの設定を変更できます。標準のキー設定を、簡単にカスタマイズできます。変更したキー定義は、プロファイルに書き込まれるので、次回のISPFセッションでも有効です。

    LIST KEEP

    リスト・データセットを直ちに表示可能にします。ISPFにおけるPRINT機能は、データセット内容やメンバーリストなどをリストデータセット(userid.SPFn.LIST)に書き出すことです。しかし、セッション中はOPENされたままなので、Browseなどで表示させることができません。そのために、一旦ISPFを終わらせたり、TSOからLOGOFFしたりするのも面倒です。LIST KEEPコマンドを入れれば、その時点でカレントなリスト・データセットがCLOSEされます。DSLISTなどから選択すればプリント内容を表示させることができます。KEEPの他にPRINT、DELETEがあります。LISTではなくLOGコマンドであれば、ログ・データセットについて同様の操作ができます。

    MSGID

    最後に表示されたメッセージの識別IDを表示します。メッセージを消してしまったり、テキストしか表示しない短メッセージの場合、このIDによってメッセージ・マニュアルを検索できます。

    PRINT|PRINTL

    画面のイメージをプリントします。PRINTLは論理画面です。論理画面のプリントではSPLITによる複数プログラムを実行しているときに、コマンドを入れた方のプログラムの画面パネルだけをプリントします。

    RETRIEVE|RETP

    以前に入力したコマンドを再表示します。RETPコマンドは、ポップアップ・ウィンドウでの表示です。

    SETTINGS

    ISPFオプション0(Settings:設定)パネルを表示します。

    START、SWAP

    STARTコマンドは、新たな論理画面でダイアログを開始します。既に2つのダイアログを実行中に、3つ目のダイアログを新規にスタートさせることができます。3つ以上のダイアログを並行している場合は、PF9キーでは単純に切り替えできません。SWAPコマンドを使用します。SWAPコマンドの使い方はこちら(「ISPFで3つ以上のパネルを使う」)に解説してあります。

    DDLIST

    ISRDDNユーティリティーを実行します。ISRDDNは現行セッションに割り振られているデータセットのリスト、システムENQのリスト、競合しているENQのリスト、システム環境に関する情報を収集する機能などを提供します。

他にも多くのコマンドがあります。ISPFコマンドの詳細は「ISPFユーザーズ・ガイド第1巻」(SC43-2667)に解説されています。ISRDDNユーティリティーの詳細は、同マニュアルの付録G. ISRDDN 診断ユーティリティーに解説されています。