メインフレームの世界では、ハードディスクのことを「DASD」とも言います。ダスドと読まれますが、英語圏の人にはダズディと言わないと通じないです。同じようなハードディスクを使っているのに、PCの世界ではDASDという言葉はほとんど使われません。これには歴史的な経緯もあります。
かつて、直接アクセスができる記憶装置には、ディスク装置の他にもいくつかの種類がありました。例えば、磁気ドラム装置というのがあり、1960年代~70年代ぐらいまで使われていました。ドラムというのはその名の通り、バスドラム(大太鼓)みたいな記憶メディアが、グルグルとぶん回り、まわりに読み書きのための磁気ヘッドがついているものです。ディスクでは記録部分は円盤状で、それが回転するということでは似てましたが、大きく違う点が、ヘッドが動かずに固定されていることです。トラックの数だけヘッドがあると考えて下さい。ディスクの場合は、目的のトラックをアクセスするためにヘッドが動きますが、ドラムではそれがないのでFixed Headとも言います。ディスクと違ってアクセス・アームが動かないので、同じ回転速度なら構造的には早いのですが、やがては半導体メモリーなどに置き換わり、その後なくなっていきました。
そんなわけで、当時は、直接アクセスできるデバイスはディスクだけとは限らなかったので、ディスク、ドラム、その他を総称してDASD(直接アクセス記憶装置)としたわけです。
IBM 2305 fixed head storage(US IBM, IBM Archivesより)
現在では、直接アクセス記憶装置=ハードディスク装置となっているので、DASDはディスクの同義の意味で使われてます。しかし、PCなどでは日常的に使われることはなく、メインフレーム特有の用語となってしまっています。