メインフレーム・コンピューターは、主に企業の基幹業務処理や大学や研究機関における科学技術計算処理などに利用されてきた「大型汎用機」あるいは単に「汎用機」とも呼ばれる大規模なコンピュータ・システムです。汎用機と呼ばれますが、それは360°方向あらゆる用途に適用できると言う意味で名付けられたものです。それまで(1960年代前半まで)のコンピューターは、事務計算用、科学技術計算用、リアルタイム処理用などと目的に合わせて設計されましたが、1つのコンピューター・システムであらゆる目的のために利用できるようになったため、「汎用機」と呼ばれるようになりました。ハードウェア機器やOSは、同じメーカーの同じアーキテクチャの中での組み合わせが基本で、パーソナル・コンピューターなどにおける「汎用パーツを使って最速のPCを組み上げる」と言ったような、一般流通部品や機器を使って構成されたからではありません。
メインフレーム・コンピューターは、大企業、大学や政府の研究機関などの商用利用だけでなく軍事用にも利用できるよう、「壊れない・止まらない」と言った絶対の信頼性を実現すべくあらゆる技術が応用されました。もちろんコンピューターですから性能は追求されましたが、この非常に高度な信頼性が、メインフレーム・コンピュータがメインフレームたる所以です。もちろんその代償としての価格も高価です。よって大企業や国家機関などでの利用が主だったわけです。
メインフレーム・コンピューターは、現在も大企業での基幹業務に幅広く使われていますが、これら企業が最初に事務処理をコンピュータ化した頃(S/360登場以降)は、商用コンピューター=メインフレームだったからでもあります。その後UNIXの一般化やWindowsサーバーなど企業ユースにも十分適用できる低価格なシステムが広がりましたが、CPUやメモリー単体での処理性能やスピードではなく、コンピューター・システム全体としての性能と信頼性は、今でもメインフレームがその最高峰にあります。加えて徹底した上位互換性によって、過去数十年に渡って使われてきた数多くのユーザー・プログラムをソフトウェア資産として継承することができ、互換性の維持も今日のメインフレームの重要な役割の1つになりました。
※2024/4/4追記:「メインフレーム入門」カテゴリーで連載した一連の元記事でリンクしていた米国IBMの「IBM Archives」は廃止されてしまいました。同様のものではありませんが「IBM Heritage」という、IBMが1世紀以上にわたりIBMを培ってきた人々、イノベーション、価値観と同社が情報技術産業の開拓にどのように貢献したかについての物語を紹介したサイトがあります。廃止されてしまった「IBM Archives」の代わりとしてリンクします。